秋のある日

517 英一郎 秋のある日1sage New! 2007/11/11(日) 23:06:44 ID:lnbUaAoAO
その洞窟にはカビっぽい空気につつまれた祠がある
その祠での話。

自己紹介:僕は凪月、フリーな大学二回生さ!

神無月のとある休日、仲のいい友人と海辺のキャンプに行った。
九月の中頃から誘いを受けていたからだ。キャンプなんてしたことなく楽しみですぐにOKした。
車もテントも友人任せ。そんな大した準備も必要無かったから気軽に了承したのかもしれない。
キャンプ当日、最寄りのコンビニで待ち合わせをした。午後三時に迎えに来る予定・・・・・・・だったが大幅に遅刻して四時に来た。
車の所有者の母が直前まで車を使っていて引継ぎで色々手間取ったらしい。
内心『今日、車借りるのわかってたら間に合うように車譲れよ』とか思っていたが、当然乗せてもらう側としてはそんな事言えないし、笑ってごまかすしかなかった。
車の中ではヒヨコの人形が散りばめられていた。
『なんてファンシーな母親だ』そんな事思っていたら、考えを読んだように「父さんの趣味」と言ってきた。かなり苦笑いだったけど笑顔でごまかした。


518 英一郎 秋のある日2sage New! 2007/11/11(日) 23:09:18 ID:lnbUaAoAO
目的地まで約二時間、買い物した時間も合わせたら三時間かかった。買い物は、主に食品・雑貨だった。
友人はドライアイで目薬必須らしいけど切らしていたみたいで、お気に入りのメーカーのを買っていた。
車は快調な走りをみせ何事もなく目的地に着いた。
海辺でキャンプってのは聞いていたが、予想と違い本当に海辺、砂浜だった。
『夜の砂浜、女の子が相手ならなんてロマンチックだったんだろう』と、つまらない事考えつつ「どこにテント張るの?」と聞いてみた。
返事は返ってこない。心なしか笑っている気がする。
しばらくしてその友人、アッシーが口をひらいた。「実はね・・・・」返事を聞いていて「なんてこったー」と自分のデコをペシっと叩いていた。


519 英一郎 秋のある日3sage New! 2007/11/11(日) 23:11:50 ID:lnbUaAoAO
九月初旬、ドライブしていた時にトイレへ行きたくなった。
けど道なりに進んでもトイレを無料で借りられそうな建造物が無く、丁度よくひっそりとした砂浜を見つけ立ち寄った。
その時に、少し先に洞窟が在ることに気付き、そこに入ってみたいと思ったらしい。
それで今に至ると、、、
聞いてもいないのに「あの辺りで小便したんだ」っと嬉しそうに言ってくる。
『いい迷惑だ。そんなどうでもいい事に付き合わされているのか。ってか「一人で入るのが怖かったから誘ってみたんだ」ってキャンプの目的に洞窟探索が入ってるなんて知らないよ!』とか思いながら、「あははー、面白そうだね」って言ってみたりした。
そしたら、「でしょ!だから洞窟の中で寝てみたいなぁーとか思ったりしてテント持ってきてないんだ。
もちろん寝袋は持って来てるし毛布も在るよ!それとたぶん使えないけどハンモックも用意しました!えへへぇ」アッシーは凄く良い笑顔だった。
『と言うかそれキャンプじゃねーよ、野宿だよ!』ってツッコミたかったけどあえて「用意周到だね」とだけ言って焼肉の準備を始めた。


520 英一郎 秋のある日4sage New! 2007/11/11(日) 23:14:13 ID:lnbUaAoAO
僕が焼肉の準備をしている間、アッシーは携帯ゲーム機に脳年齢計るソフトを入れてやっていたが「これって嘘っぱちだよね」っと終始僕に話し掛けてきた。半年位前に買って未だに年齢が毎回30歳前後らしい。
言っておくが年齢は僕と一緒だ。正直「脳のシワが少ないのかな?」と遠回しに馬鹿にしてやれたけど「僕も前やった時、40歳くらいだったよ」っと、やったこともないのに嘘をついてアッシーをフォローしといた。その時の僕の心境『知らない方が幸せな事ってあるよな・・・・』
そんなこんなで明らかに温度差のある僕ら二人は、仲良く肉を取り合った。酒もあったがとりあえず洞窟探索まで平常心でいたかったので、飲まずに肉を食べることに集中した。
アッシーは、僕が食べたくて買ったきたツマミを隠れてチビチビ食べていた。(ツマミが無くなっていたのに気が付いたのは帰りの車の中)


521 英一郎 秋のある日5sage New! 2007/11/11(日) 23:17:57 ID:lnbUaAoAO
そして薄ら寒くなった十時頃、「洞窟行きまっしょい!」とアッシーが背伸びしながら嬉しそうにこっちを見てきた。
「そうだね。行こうか。」それ以外答えようがない。「で、ライトとかは?」不敵な笑いを浮かべる
アッシー「フフフ。この前100均で物凄く明るく光る電球を使用してるらしいライトを買って、そのままで車に置いて在るんだ。
ちょっと待ってて!」
本当に用意周到だと思った。が、なかなか車から出てこない。しょうがないのでアッシーを呼びにいった。
「どうかした?」引きつった笑顔で携帯をしまうアッシー「ライトは在るんだ。でもね・・・電池が無い」
アッシーの事を準備が良いと思った自分が情けなかった。
ただ、本当に準備はしていたらしく電池も置いてはずなのだが、置いていた場所を探しても見つからない。なので母親に連絡してみたら、先週テレビのリモコンに使うため家に持ち帰ったらしい。
家庭の事で口を挟むつもりは無いが、行動の結果迷惑しているのが僕だと気が付いて欲しかった。
が、そんな事思っていても仕方ないので鞄に入れていたMDの予備電池をアッシーに差し出した。
「おぉ!ありがとう!」アッシーの感謝の気持ちは有り難いが、プライベートで一緒に行動してこんな疲れる人だとは思わなかった。
やっと洞窟に入る準備が整った。その時すでに、いくつもの試練を乗り越えてきた初代ライダーみたいな気分だった。
で、洞窟前まで場面は移る。


522 英一郎 秋のある日6sage New! 2007/11/11(日) 23:19:18 ID:lnbUaAoAO
案内された洞窟の入り口には一昔前のダッチワイフの様な人形が立て掛けられ、彼女が看板を掲げていた。
[↑公衆便所by チ〇コジャンボ]
「何の看板だよ!!」大学では、おしとやかキャラを演じていたのに思わずそんな事口走ってしまった。
ただByの後の空間が少し空いてる。気になったので近づいてライトを当ててみた。
[↑公衆便所byパチンコジャンボ]
「誰の悪戯だよ!!」またやってしまった。明らかに故意に、パ、の部分が削られていた。
ただ削った奴が馬鹿なのか、パ、の形をそのままそっくり削ったみたいで彫った跡ですぐに、パ、だとわかった。


523 英一郎 秋のある日7sage New! 2007/11/11(日) 23:21:38 ID:lnbUaAoAO
「ゴフン」わざとらしい咳払いをしてアッシーの方を見てみる。彼はダッチワイフの構造に夢中だった。
「・・・・じゃあ行こうか」やっとアッシーは我に返った。
洞窟は横に狭く縦に長かった。100均で買ったという懐中電灯も大活躍だ。
入り口ですぐに地面が砂から岩に変わった。洞窟探索開始から五分ほどして空気に変化がみられた。
冷たく乾いた空気から、冷たく湿った空気に。。
「カビ臭い」アッシーが口を開いた。「本当だね」まったくもって同意見だった。ただ人間の鼻は馬鹿だ。
しばらく歩いたらすぐ鼻が麻痺して気にならなくなった。
歩いても先に壁がない。終着が見つからない焦りからか、どのくらい時間が経ったか気になった。
十時半少し前。まだ十分も歩いてない。携帯は思ったとおり圏外だった。


524 英一郎 秋のある日8sage New! 2007/11/11(日) 23:24:18 ID:lnbUaAoAO
『まだまだ旅は始まったばかりか・・・。』心の中で呟いた。
しかし、ゴールは意外と目前だった。そこから三分ほどしてソレと出会った。
人間の白骨・四足歩行タイプの動物の白骨・鳥の白骨・・・・。他にもいくつか動物の白骨があった。
そんな異常な光景を目のあたりにして僕はプレデターを思い出していた。それらの骨格には共通して在るべきモノが欠けていた。
頭蓋だ。
驚きを隠せず「なんだよ、ここ!」思わず声を張り上げてしまった。アッシーも「此処やばい・・・よな」とこっちを見てきた。
すぐにでもその場から走って逃げ出したかった。でも驚きと意味不明な恐怖で足が動かない。
お互いにじっと前を見据える。すると暗闇に目が慣れてきたのか、奥に何かあるのに気付く。
ただ引き寄せられるままにその何かに近づいていく。


525 英一郎 秋のある日9sage New! 2007/11/11(日) 23:26:42 ID:lnbUaAoAO
祠だった。いつの時代のものかわからないお札が、扉を閉ざしていた。正確には既にそのお札はキレイサッパリに焼き切られていた。
つまりこの祠の扉を封していた呪物的代物が無効化していたのだ。
頼んでもないのに勝手に扉が開いていく。ご丁寧にも自動で開く扉の所為で祠の中身が明らかになる。中を見てまた驚いた。
手前で横たわってる白骨のモノらしき頭だ。それも原型を留めている。つまり、生前のままだった。
変色することなく今でも血が通っているように。
人間の頭部に目が向う。何か違和感がある。でも何がおかしいかわからない。全てが異常だった。
ライトの光が祠の奥を照らす。裏にはまだ奥があるようだった。その先は奈落に続く気がした。


526 本当にあった怖い名無し 秋のある日10sage New! 2007/11/11(日) 23:28:51 ID:lnbUaAoAO
『引き返すなら今だ』そう感じた僕は「アッシー戻ろう」と言い、急いで砂浜に引き返した。
入った時とは比べものにならない早さで入り口付近まで来た。
日が射してる。逆光で見にくいが、洞窟の出口に人らしきモノが転がっている。一瞬身を退いた。
しかし、それがすぐに入るとき見かけた人形だという事に気が付く。通り過ぎる際、ワイフを蹴飛ばそうとして驚いた。
頭が無い。入るときには付いていたのに。明らかに時間の進みがおかしいが時計なんて見ている暇は無い。
車に戻り急いで席についた。「えっ?」アッシーの顔色が冷めて固まっている。
アッシーの目線の先を見るとダッチワイフの頭がブレーキペダルの横から顔を覗かせている。
少しでも早くその場から離れたい一心で、ワイフの顔を掴みとり窓から投げ出した。
盗難に遭わないよう貴重品は予め車に置いていたので、すぐに車は走りだした。
時計を見ると午前七時過ぎだった。


543 本当にあった怖い名無し 秋のある日11sage New! 2007/11/12(月) 00:06:10 ID:lnbUaAoAO
八時間強あの洞窟に居たことになる。でも自身の体感では長くて一時間くらいだ。なんとも言えない気分だった。
車を走らせて一時間、落ち着いてきたらお腹が空いたのを感じて、『やっぱり九時間近くあそこに居たんだな』っと実感した。
昨日買っておいたツマミを探す。
アッシーにどこに置いたか聞いたら「昨日食べちゃった」と申し訳無さそうに答えてくれた。
彼の一言で『日常に帰ってきた。』と心底思った。
帰り道にコンビニがあったので食物と飲み物を買った。
車の中で食事してるとアッシーが「頭あったよね・・・人の」思わぬ話題を振られて僕は「・・・うん」とだけ答えた。
「あの生首さ、テレビの時代劇とかで武士が切腹して介錯してもらった後に凄いそっくりだった。あの髪の感じとか。」
その話を聞いて違和感の正体がわかった。少し前に借りたビデオ、[なんたら怪奇ファイル]の首無しライダーの回で、首だけのシーンを見ていた。
今回偶然にも見てしまった生首とは違いがあった。髪型だ。
人によって髪型なんて多種多様だけど、その生首は頭頂部を剃っていて、後頭部から首にかけて髪が垂れ下がってた。
つまり時代が違った。現在にあるべきモノではない。いや、あるはずなかった。異常な事態。でも、考えるのはやめた。
何故そんなモノが存在していたかなんてわからない。調べに行こうとも思わない。知らないままでいいと思った。
ただ、その秋に人が触れるべきでない領域がこの世界にあることを知った。