案山子


578 雷鳥一号 sage 03/11/16 23:35
知り合いの話。

大学の研究室で山に登った時の事。
廃村を見つけたので、そこで一泊することにした。
まともに残っている家屋敷は一つだけで、その前にはかなり広い田圃があった。
田圃は荒れ放題で水も入っておらず、案山子が一つだけ、ぽつんと立っていた。

翌朝、起き出してきた者は田圃を見て唖然とした。
一晩寝ている間に、田圃は見渡すかぎりの案山子で埋め尽くされていた。
どれもぼろぼろで、その数は百を優に超えていたらしい。

帰り道では、その廃村を通らなかったそうだ。

579 雷鳥一号 sage 03/11/16 23:36
友人の話。

学生時代、彼が所属していたサークルでのことだ。
キャンプ地の横に廃棄された田圃があり、そこに案山子が一つ残されていた。
彼はテントを設営する前から、その案山子に違和感を感じていたらしい。

そのうちに、違和感の正体が分かった。
どこに行っても、あの案山子は、常に顔を彼の方に向けているのだ。
案山子が動いているらしいことを先輩に訴えると、こう言われたそうだ。
案山子だって寂しいだろうし、好奇心もあるんだろうさ。

急に拍子抜けして、そのまま最終日まで過ごしてしまったのだという。


580 雷鳥一号 sage 03/11/16 23:37
知り合いの話。

家族で山の高原に遊びに出かけたのだという。
ススキの野原で秋の風を楽しんでいる時、妙なものに気がついた。
原っぱの向こう側に、案山子が一つだけ立っていた。
案山子といっても、全身をくねらせているように動いている。
こんな人里離れた場所に電気はないだろうし、動力は一体何だろう?
そんなことを考えていたそうだ。

子供がいきなり、おーいと言って、その案山子に向かって手を振った。
案山子は、ひょいと手を上げて振り返してきた。
それを見た途端、彼は子供を抱えて車まで走り戻ったそうだ。