くだん



310 雷鳥一号 sage 03/11/28 21:39
えー、私みたいにお話を収集していると、時折妙なことに気がついたりします。
まったく関係の無い人たちから聞いた話が、実はどこかで繋がっているのかも
しれないという、ナンともいえない感覚とでも言いましょうか。
前スレのヒサルキなども、別の怪談にリンクしていくのを知った時には思わず
総々毛が立ちましたです、ハイ。

というわけで、今夜はどこかリンクしているかもしれないお話いきます。
間奏じゃなかった感想などいただければ嬉しい。


311 雷鳥一号 sage 03/11/28 21:40
知り合いの話。

学生の頃、友人にバーベキューに誘われた。
友人の家は酪農家で、町外れの山で小さな牧場を経営していた。
楽しく飲み食いしていると、敷地の片隅に変わった牛舎があるのに気がついた。
建物自体は普通だったが、入口が牢屋のように格子状になっていた。
どんな牛をいれるんですかと尋ねると、友人の親父さんが教えてくれた。

あれは牛を入れていたんじゃない、くだんを入れていたんだ。

くだんというのは人間の顔に牛の身体を持つ化け物で、予知能力を持つという。
先の大戦中に生まれたそうで、当時では色々とまずかったことを予言していたらしい。
親父さんはこの話を、しごく平然と語っていたそうだ。


312 雷鳥一号 sage 03/11/28 21:41
後輩の話。

女の子二人だけで、ある渓谷の観光に出かけた時のこと。
渓谷近くのバス停で出会った小母さんに注意されたという。
このあたりの山谷を歩く時は、くだんに気をつけるんだよ。

くだんとは何かと聞くと、人間と動物の合いの子みたいな人面獣身の化け物で、
山に入った女性に悪さをすると教えられたそうだ。
襲われた女性は、また別のくだんを産むのだという。

本当なんだよ、私は実際に、猿のくだんと熊のくだんを見たことがあるんだ。
小母さんは真面目な顔で、声を潜めてそう言った。

信じたわけではなかったが、人影のないコース外の道は歩かなかったそうだ。

313 雷鳥一号 sage 03/11/28 21:42
知り合いの話。

真夜中、テントの中で休んでいた時のことだ。
外の荷物をがさごそする音で目が覚めた。
熊だと誰かがささやき、皆は緊張して息を殺したのだという。
その時、外から男の太い声がした。

ろくな物がねえなあ。

驚いて入口を開けると、大きな毛だらけの黒いものがいた。
身体は熊だったが、顔部の真中についていたのは白い人間の顔だった。
そいつはニヤリと笑って山の中に消えた。
チョコレートや蜂蜜などの、甘い非常食だけが失くなっていたそうだ。

315 雷鳥一号 sage 03/11/28 21:48
>>311-313
以上、“くだん”にまつわるお話でした。
ちなみに話を採集した場所は、すべて中国地方なのです。
>>311>>312の話は、現地の人なら知っているかもしれませんね。

ヒサルキもそうでしたが、こういうリンクしているかも〜話というのは
何故か妖怪といいますか異形の存在に関わるものが多いみたいです。
お話の芯というか核みたいな存在があったのかもしれません。
“ばさん”と呼ばれる妖怪もリンクしているみたいなんだよな〜。

まぁ、おいおいUPしていきますねぃ。


317 あなたのうしろに名無しさんが・・・ sage 03/11/28 21:54
>>315
中国地方ですかぁ。
六甲山なんかがくだん(件)の伝説のメッカだと認識してたのに、意外な感じです。
くだんにも色々種類があるんですねぇ

318 雷鳥一号 sage 03/11/28 22:10
>>317
くだんの言い伝えは、山陰にも山陽にも九州にもありますよ。
人面牛身の姿が有名ですが、>>312によると牛以外の獣人もくだんと呼ぶ
地方もあるみたいですね。

六甲のくだんは牛面人身なので、実は六甲側の方がくだんとしては異質
なのかもしれません。知名度は圧倒的ですが。
猿のくだんらしきものがあとをついて来る話を知っていますが、イヤだ
ろうな〜実際に目撃しちゃうと(汗)。


323 あなたのうしろに名無しさんが・・・ sage 03/11/28 23:20
小松左京の「くだんの母」は名作だったな。

324 雷鳥一号 sage 03/11/28 23:28
>>323 小松左京の「くだんの母」は名作だったな。
あれは凄い作品です。もの凄い作品です。
恐怖小説としてもショッカー小説としても一級品な上に、最後の最後で読者を
作品世界に取り込んでしまうトンでもない仕掛けまで用意されています。
呼んでいない人は損をしていると言い切るくらいの作品です。

元ネタは六甲というか芦屋の方で終戦直後に語られたいくつかの都市伝説らしい
ですけど。繋ぎ合わせが見事です。


325 雷鳥一号 sage 03/11/28 23:35
>>319 民俗伝承がベースなんですね。
民俗伝承というのは、不可解な事象に遭遇した際の、精神を安定させる
落とし所としての一つのパターンなのかもしれません。
理解不能なことが起こった時、こう考えると日本人としてはしっくり来る、
納得できるといったような物語なのでしょう。
精神上の安全弁みたいな存在とでも言いましょうか。

だから人はくり返し伝承を伝えていくし、また妖怪も廃れないのでしょう。
私が山登りが好きなのも、それにまつわる話が好きなのも、そういった
理由なのかもしれません。

…という意見を、今書きながら思いつきました(w。

326 あなたのうしろに名無しさんが・・・ sage 03/11/28 23:36
漫画「地獄先生ぬ〜べ〜」にでてきたくだんは
ウサギだった気がします。
あとくだんっていうと
「せがれいじり」を思い出します。
「ばさん」ってのは妖怪ですか?はじめて聞きました。
雷鳥兄さん、楽しみに待ってるのでよろすく


328 雷鳥一号 sage 03/11/28 23:52
>>326
うおぅ!?
312ではあえて書きませんでしたが、地元の小母ちゃんが挙げたくだんの中に
「兎のくだん」があったのですよ!
面白いけどちょっとナンだよな〜、なんて小賢しいこと考えた挙句に抜いて
しまいました。…偶然なのかなぁ?

「ばさん」っていうのは「波山」と書くみたいです。
個人的な考えですが、西洋でいうところの「バシリスク」と一致する化け物
ではないかと思っております。
外見がバシリスクの別名でもある「コカトリス」によく似ているのですよ。
石化能力や即死の毒は持っていないようですが。
「ばさばさ」「犬鳳凰」とも呼ばれるらしいです。

こんなことを考えているのは私だけかもしれませんが、こんなことを考える
のが大好きなのですよ〜(w


330 聞いた話 sage 03/11/29 00:31
「猿聟入」
昔ある村が日照りに襲われたため水を引く事になり、その際猿男の力を借りた。
猿男はその働きの対価として「村の娘を嫁にくれ」と言いだした。
話し合いの結果、長者の三女を猿男の下へ嫁入りさせることとなった。
長者は嫁入り道具として臼と扇子を持たせることとし、
猿男は臼を担ぎ、娘は扇子を持って猿男の住む山へ向けて出発した。
途中橋を通る際、娘は扇子を川へ放り投げ、猿男にそれを取ってくれと泣きついた。
猿男はすぐさま川に飛び込んだが、臼の重みでたちまち溺れてしまった。
進退窮まった猿男は「俺はこうなってもお前の事が忘れられん」
と言い残し、川底に沈んでしまった。


331 聞いた話 sage 03/11/29 00:35
この「猿婿入」という話は複数の人から聞いたのですが、
今まで、私は特に興味を持っていませんでした。

それが今日、雷鳥一号さんの「くだん」の話を見てふと思い出し、
下調べをするために検索してみました。
キーワードは「猿婿入」「臼」「扇子」
ヒットしたページの中に↓こんなものがありました。

http://www.library.pref.kagawa.jp/kgwlib_doc/local/local_3001.html

ここには「猿聟入」の類話が載っています。
そこに登場するのが狒猿。これは「ヒサル」と読めます…

ちょっと総毛立ちました。

342 雷鳥一号 sage 03/11/29 01:17
>>331 そこに登場するのが狒猿。これは「ヒサル」と読めます…
おそらく狒々という妖怪の影響があるのではないでしょうか。
猿に似ているが、猿以上の存在として「狒」という字が使われたのでは
と類推しております。
あくまでも個人の考えで、全然アカデミックな説ではないですが。
しかし、面白いサイトですね。
ここを読むと、桃太郎と一寸法師と力太郎が元は一つの話だったという
説を思い出しました。

紹介された「狒猿」ではないのですが、「狒々猿」の話を一本知っています。
内容は前スレのヒサルキとほとんど同じです。
重複するのもアレかなぁと思いUPはしなかったのですが、狒々繋がりと
いうことで書きましょう。

もう一本、飛猿(ヒサル)っていう話もあるのだけど、どうしようかな?