アデル


160 本当にあった怖い名無し sage 2006/10/13(金) 17:20:46 ID:Ji1rC2mB0
上の話ほど感動できるかどうか分からんけど。ありがちな話でスマソ。

 犬のアデルが死んだ。
アデルは、弟が中学校にあがるときに、拾ってきたシェパード雑種だった。
いつも弟に懐いてて、弟の命令なら何でも聞いていた。
弟は女の子っぽくて、いつも、「オカマ、オカマ。」と苛められてて、
余りにも凄い虐められっぷりで、その時代、アデルにしか心を開いてなかった。
おかんが居れば、別だったんだろうが、あいにくおかんは、弟が生まれてすぐに事故死してる。

 弟は中学卒業後、何故か東京の高専に進学した。
地元をよほど嫌っていたらしい。弟は、アデルを連れて東京に行った。
「寂しくなったなぁ…。」と、親父はいつも言っていた。
最初は「俺は犬が大っ嫌いなんだ!飼うな!!」と、アデルを避けていたのに、
結局親父が名前付けてて、散歩とかにもよく行ってた。
親父も寂しかったんだろう。

 そんな弟も、今年で専門学校二年生。
ある日、バイトから帰ると、アデルの様子がおかしかった。
朝は全然、元気で散歩にも行ったのに。
いつもなら、ドアを開けると、アデルが出迎えしてくれるのに、
その日は、ノタノタと這う様に出てきた。
「どうしたの?」と言うと、アデルは「クーン…。」と鳴いて、弟に寄りかかった。
どうも動きが鈍いと思って、拗ねてるのかなと思い、
「アデル、ご飯だよ。今日はアデルの好きなサラミご飯。卵も乗せよう。」
と、言ったが、いつもだったら、振り切れんばかりに尻尾を振って、
嬉しそうに目を輝かせるんだが、その時は、尻尾をゆっくり振っただけ。
弟は、急いで近くの病院に運んだ。
 元々、何処かしら悪かったらしく、もう、手遅れだった。
元々悪いところが腫瘍になり、心臓を裏から圧迫していて、もう、取り除けない状態だったらしい。
「もう、逝かせてあげましょう。」と、先生は言ったそうだ。
「じゃぁ、連れて帰ります。」と、弟は腹を決めた。
その二時間後アデルは、自宅で、お気に入りのソファの上、大好きな弟の膝の上で、息を引き取った。

161 本当にあった怖い名無し sage 2006/10/13(金) 17:21:30 ID:Ji1rC2mB0
 その頃、うちでは、俺と親父が茶の間で酒を飲んでいた。
親父が、「おい、アデルの歩く音がするぞ。」と言う。
「親父、寂しすぎて幻聴じゃねぇの。」と言ったが、俺にもその時聞こえた。
チャカチャカと言う、アデルの爪が床に当たる音がしてる。
気がつけば、皿の上にあったおつまみのサラミが、全部なくなっていた。
出したばっかりだったし、親父はサラミ嫌いだから、俺しか食う奴いねぇのに。
「…アデルか?」
と、ちょっと変な予感がして、二人で顔を見合わせた瞬間、家の電話が鳴った。
「兄ちゃん、アデルが死んだ。」
弟からの、電話だった。

 「だから飼うなって言ったんだ。どんなに好きで一緒にいても、
どっちかが死んだら悲しいじゃないか…別れは突然来るんだから。ましてや犬や猫は寿命が短いんだから」
電話を切った後、報告したら、親父は泣いていた。