そっちじゃない!

823 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/01(火) 00:56:31 ID:woNNPjLh0
実家に行くには山を二山も越えなくてはならず、随分と帰っていなかったが
一応本家筋の長男ということもあって、大叔母が危篤になったと急遽呼び戻された。
通夜だの葬儀となると裃を着けて何やらしなければならんらしい。
今時そんな古臭いこと嫌だなあ、と思っていたら、戸籍謄本取る用事やら
マンション移るのに保証人の親のサインがいるとかでその時期ピッタリに
帰る羽目になった。地図で行けばすぐそこは新幹線も通っていて街なのに
実家がある場所は〇〇郷と呼ばれるような奥深い山里、昼過ぎに家を出て
ゆっくり走っていたら周りはすっかり墨を流したような暗闇、ヘッドライトの
灯だけを頼りに走っていたらとうとう迷ってしまった。
携帯の電波も届かず段々細くなる道に泣きそうになりながら走っていると
二股に分かれた道に出て、そこには石碑のようなものが建っていた。
どっちに行くか迷って広い方の道に進みかけたら「そっちじゃない!」と
怒鳴る声がした。「はい?」とラジオからの音声かと思ったが、ラジオじゃなく
U2のCDがかかっている。狐や狸に化かされたのかと、もう一度言われた方の
道じゃない方を行こうとしたら、ハンドルが重くなって狭い方の道に進んでしまった。
「うわああああ」と思って進んでいるうちに遠くに灯が見えてきて、叔父が
軽トラで迎えに来てくれる所だった。聴くと、自分が行こうとしていた道は
昨夜からの雨で土砂崩れになって行き止まりで戻ることもできなくなっていたそうだ。
叔父もそれに気づき到着が遅い自分を心配して迎えに来てくれたのだが
あの声の事を叔父さんと婆ちゃんに話すと「そらああんたの先祖やが」と
相好を崩した顔で肩叩かれた。謂れは忘れたが、何でも治水工事かなにかして
この村を救った人らしく、その碑が建てられているんだそうだ。
辛気臭いこと嫌いだったが、自分もその血をひきついでいるのだと思うと
バカばっかりやってらんないなと身が引き締まった。今年ももちろん帰る。