二つの事件


127 本当にあった怖い名無し sage 2008/06/08(日) 16:27:16 ID:J+DdXwJP0
私はA県の田舎町に産まれ育った。A県は東北地方の貧しく寂れた田舎町で住民もどこか生気がなかった。
低所得者ばかり集まった地域だったがそこは田舎だったせいか犯罪率は低く治安は悪くなかったと記憶している。
だがこの小さな町を震撼させる事件が起きた。
強盗殺人が起こったのである。被害者は一人暮らしのOL。
アパートに帰ってきたところを強盗に滅多刺しにされたらしい。
強盗は、通りすがりの小学生を人質にして逃走をはかったが、少年は間もなく解放され、警察によって保護された。
・・・何とこの少年は私の同級生だった。
一度も同じクラスになったことがなかったが顔と名前は知っていた。
メガネをかけたぽっちゃりした大人しそうな少年。体育の時間に、一人だけ見学していた彼。
休み時間に誰とも遊ばず花壇の花をむしっていた彼。木にわいていた毛虫を踏みつぶしていた彼。
どこか陰気くさくて気持ち悪い少年。彼の評判は芳しくなかったがこの時ばかりは彼に同情した。
凶悪犯にさらわれるなんていかばかりの恐怖だったのだろうかと。
当初、この事件は新聞を大きく賑わしたが・・・ある時を境にピタリと報道されなくなった。
犯人は捕まったとも逃走中とも発表されなかった。少年は・・・あの事件以来学校に来なくなった。
少年の家は引っ越していた。
子供心に非常に不可解な事件であり、級友達と共に様々な憶測を試みたが・・・
事件の真実はようとしてつかめなかった。
あれから30年。突然止まった報道。口を塞いだ県警。
引っ越した少年。今ならわかる。あの一連の出来事が何を意味していたか。
去年の秋、A県H市でパチンコ屋を襲った男が妻子を道連れに自殺するという事件が起こった。
その犯人の顔写真をみてわたしは絶句した。
テレビ画面に大写しになっている凶悪犯は間違いなく彼であった。