人面狗


64 闇男爵。 sage 2006/07/02(日) 19:53:05 ID:XhL+22oqO
人面狗
1992年、夏。
東京のある町に一匹の可愛らしい子犬が生まれた。
野良犬であった為に、母犬は子犬を一人立ちさせると、
姿を消した。
孤独になった子犬は、各地をさすらい、
やがて成犬となった。行く先々で酷い扱いを受け、
傷だらけになった犬の鼻は、
皮が傷で化膿し、
大きなデキモノになっていた。
そしてデキモノは、
少しずつ、少しずつ、人間の顔の様になって行った。
その疽は、不思議な事に言葉を理解し、
話し、食事もする。
言葉使いはチンピラの様な汚い言葉を使い、犬の思考を読み、
不平、不満をまきちらしていた。

65 闇男爵。 sage 2006/07/02(日) 20:14:00 ID:XhL+22oqO
>64 の続き
そんな旅の途中、
全国には都市伝説として、人面犬現る!
などのタイトルが雑誌を飾り、ブームとなっていた。
その頃、痣をもつ犬は顔全体を覆う位に成長した人面痣に精神を侵され始めていた。
あるきっかけ(事故死した人の肉を食った)で人肉の味を覚え、各地で人食いを繰り返す毎日…
だが、そんな日も一人の託鉢僧によって終止符がうたれる。
「可哀想に…人面痣か…」
魔を退ける経を読み、人面痣を消滅させた。しかし犬の体力は尽き果て、
天に召された。
僧侶は手厚く犬を葬ると、旅に戻って行った。
だが…、僧侶の首筋には、
小さな人の顔が、
にやりと笑っていた。人面狗・完