品定め(猿夢)
101 2006/12/21(木) 20:22:55 ID:y5YyLTNY0
「猿夢1/2」

私は夢を見ていました。昔から私は夢を見ているときに、自分は夢を見ているんだと
自覚することがありました。そしてそれが分かるときは、自分の念じた人を夢に
登場させることも出来ました。


僕はその日、薄暗いホームに立っていた。なんの為に、どこへ向かうのか、
意識がはっきりしない中で、濁った音声のアナウンスだけが鮮明に聞き取れた。
〜まもなくホームに電車がまいります。それに乗りますと、怖い目に遭います〜
意味をよく理解できなかった。しかし、そうこうしている内に、僕の前には奇妙な形の
電車が止まった。その電車にはまるで生気のない男女が数人一列に座っていた。
なぜだか説明できないが、このときその電車に乗らなければ、という意識が働いた。
僕は一番奥の座席に腰を下ろした。
そして今度は、あの濁った音声のアナウンスが車内に流れた。
〜次は活けづくり〜活けづくり〜
意味不明なアナウンスを聞いて要約これが夢だということに気がついた。
なんだ夢か…ならばいつか目が覚めるだろう。そう、胸を撫で下ろしたとき、奥の車両から
けたたましい男性の声が響いた。思わず席を立って覗き込むと、背広を着た
サラリーマン風の男がまるで皮を剥ぐように切り裂かれていた。吐き気と恐怖が同時に
自分を襲った。これは夢だ!夢なんだ!何度も心の中で叫んだ。
するとまた、あの濁ったアナウンスが流れた。
〜次はえぐり出し〜えぐり出し〜
な、なんなんだ…やめてくれ。顔を手で抑えて座席にうずくまった。
耳をふさいでも聞こえてくる。女性の劈くような叫び声が車内に響く。見たくない。なのに
なぜか体が勝手に見ようとしてしまう。指の隙間から覗くと、隣の車両は血まみれになっていた。
ひっ…!また顔を覆うようにうずくまろうとした。瞬間、見覚えのある顔が見えた気がした。
もう一度よく見ると、それは同じ学校に通う奥森リサコさんだった。奥森さんとは中学も一緒だった。
美人で、頭も良くて、運動もできて完璧な女の子。僕がずっと片想いをしている人だ。
またアナウンスが流れる。



102 2006/12/21(木) 20:27:36 ID:y5YyLTNY0
「猿夢2/2」

〜次は挽き肉〜挽き肉〜
最悪だ。どんな状態になるか、想像がついてしまった。ふとよく見ると、順番からして
次はなんと奥森さんだった。嫌だ!たとえ夢であろうと奥森さんがそんな風に死ぬところなんか
見たくない!そうだ、これは夢なんだ。普段話しかける勇気もない僕だけど、せめて
夢でくらい奥森さんの前でカッコイイとこを見せたい。無我夢中で隣の車両に
突っ込んだ。必死だった。後の記憶がない。

―――――翌日――――

「ちょっ…リサコ!」  「おはよう、美希」
「おはようじゃないよ!3組の和田君が死んだって!」 「…は?」
「朝、親が起こしに行ったら冷たくなってたって!全校朝礼開くって先生が」
「嘘…だって和田君…」
「リサコ中学から一緒だったんでしょ…ていうか、もうウチの学校、死人5人目だよ!
呪われてるんじゃ」  「やだ…偶然だよ」   「でもっ!」
「美希、落ち着いて。とにかく先生来るの待とう」
「…うん」

男って本当に馬鹿ばっかり。
和田は私に気づくのが一番遅かったわ。やっぱり根暗なのはダメね。
私に気がある男はみんな私を助けようとして死んでゆく。
私は自分につりあう男が現れるまであの夢を見続ける。
才色兼備って罪ね。

愉快でたまらないわ。