廃病院の話

272 廃病院の話 sage 2007/03/16(金) 23:28:20 ID:CJ44sQOF0
肝試しにやって来た俺は本当に電話がかかってくるか試すべくカルテを手にしていた。
「さて、帰るか」・・・と思った時不意に懐中電灯が消えドサっと音が聞こえ
何事も無い様に懐中電灯が点いた、仲間が俺の後ろを驚愕し見ている。
次の瞬間弾かれた様にみんな散って行く、俺も何が起きたかは分からないが
ヤバイと思い後ろを見る事無く走った、ただただ走った。
車を置いてた場所まで戻ってきたが・・・・・「薄情な奴等だ、俺一人置いてけぼりかよ」
何が居たかは知らんが流石に敷地外までは追ってこれないだろう。
「仕様が無い、歩いて帰るか」
とぼとぼと情けなく歩く、久しぶりに走った所為か体中が痛い・・・誰かに掴まれている様だ
「憑かれたかな?・・・何てな、馬鹿馬鹿しい」
しかし自分を褒めてやりたい、しっかりカルテだけは掴んでいるもんなぁ。

273 廃病院の話 sage 2007/03/16(金) 23:29:32 ID:CJ44sQOF0
そんなこんなで自宅に着いた
「あれ?携帯がない、落とした? マジかよ〜洒落になんね〜ぞ」
落胆してると・・・ふっ、と視界の隅で赤い光がチラつく
「家電にメッセージが一件・・・・・マジかよ」
恐る恐るボタンを押す、きっと仲間からの留守電に決まってる・・・・・決まってるさ
「おい!大丈夫だったか? コレ聞いたらすぐに返事くれ!!!」
はっ、ははは・・・・はははははははは やっぱり噂は噂でしかなかったんだよ
急いで電話をかける、今の時代に家電から携帯にかけるとは何か恥ずかしいな
「おう、お前等よくも見捨てやがったなw」
「お〜無事みたいだな、安心したぜ・・・おい、あいつ無事だってよ!」
下らない事をベラベラ喋る、そして疑問に思ってた事を聞いた
「なぁ、お前等何見たの?」
「あれ?お前見てないの?なんだそれ?」
「もう俺必死に走ってさ〜体中痛いの何のっても〜」
「そりゃ〜そうだろ、アレだけの手に掴まれてたからな 痣とかなってないか?」
「は?何だソレ?手なんか見てないぞ?」

274 廃病院の話 sage 2007/03/16(金) 23:30:18 ID:CJ44sQOF0
詳しく話しを聞くとどうもこういう事らしい
不意に電灯が消えた、そして音がした、次に電灯が点いた時には既に
俺が地面に倒れていて無数の手に掴まれていたらしい・・・・・助けろよな。
だが俺は倒れた覚えすらない、何だ?からかわれているのか?
電話を切った後もずっと考えたが分からない、考えて分かる事じゃないのか?
「ピロピロ〜♪ ピロピロ〜♪ 」
「ふざけた着信音だぜ、今度は根堀葉堀聞いてやる」
「おう、ちょっと聞きたい事あんだけどよ〜」
「こちら○×病院です」
「え・・・・・何、悪戯?」
「こちら○×病院です」

何だ、まさか本物か?
カルテが目に入る、嫌な予感がする・・・・・とても、嫌な・・感じ・だ
急に背筋が寒くなる、俺は今頃になってこの状況が危険だと気付いた。

「こちら○×病院です」
「すみません、許して下さい! カルテは返しますから、ごめんなさい!」
「いえ・・・カルテは必要ありません」
「すみません二度としません!だから許して下さい!!!」
「今すぐに御来院下さい」
「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません」
「当院にお忘れ物を致しましたね? 今すぐに御来院下さい・・・では」

275 廃病院の話 sage 2007/03/16(金) 23:31:52 ID:CJ44sQOF0
もうダメだ、逃げられない、こうなったら腹くくるしかないか。
多分、忘れ物ってのは俺が命を置き忘れて行ったって事だろう
逃げ道はない、助かる方法もない、前向きな考えも浮かばない
時間が過ぎるのは早いもので、もう着いちまった。

広いロビーの中央に一人の看護婦が立っている、若くて可愛いのがせめてもの救いだな
全てを諦めた所為かこんな事を考える余裕すら出来た。

「忘れ物・・・持ってきました・・・・・」
「何を仰っているのですか? 忘れ物ならここに・・・」
そう言うと彼女は一つの携帯を取り出した
「あっ、それ俺の携帯! やっぱりここに落としてたのか、もしかして忘れ物ってコレ?」
「はい・・・・・」
俺は助かった事で有頂天になり彼女に感謝した
「ありがとう、本当にありがとう、色んな意味で!あっそうだ、俺もカルテ返します」
「いえ、必要ないと申した筈ですが・・・」

そう言うと彼女はカルテから手を離す、ヒラヒラと宙を舞い何かに当たりそのまま落ちる
「!!!」

俺はまるで漫画の様にガクリと膝から落ちた
そこには未だ無数の手に掴まれている俺が居たのだから・・・・・