山小屋

372 1/2・元ネタは「山小屋」 2007/05/06(日) 02:30:56 ID:7L7mgh8Q0
学生時代からの登山仲間4人で雪山に登った。予報にない吹雪に遭い、
どうにか夜までに山小屋を見つけて避難した。しかし、おんぼろの小屋で、
燃料も食糧もない。そして夜までに手持ちの燃料は尽きてしまった。
無線機で麓に連絡はついたものの、吹雪が止み、救助が来るまで俺たちが
持ち堪えなければ意味がない。食糧は手持ちのが後一日分あるが、
小屋の中は真っ暗で寒い。俺たちは絶望しかけた。

誰かが提案した。「4人で部屋の四隅に立とう。最初の一人が壁に沿って歩く。
隅に着いたら、そこに立っている奴の肩に触る。触られた奴は壁に沿って歩き、
隅に立っている奴の肩に触る。これを繰り返せば眠らずに済む」

他に手はなさそうだとみんな賛成して、この生き延びるためのゲームを始めた。
俺の前にはK。俺の先にはS。皆無言のまま、触られたら歩き出し、隅に着いたら
そこにいる奴の肩に触る。

俺は途中で気づいていた。この「ゲーム」は4人では成立しない。俺の前と後が
KとSだというのが、俺の救いだった。しかし最初に始めたMと4人目のSはどう
思っているのか。何もおかしいと思わないのだろうか。でもそれを口にしたら全員が
死んでしまいそうで、何も言えなかった。


373 2/2・元ネタは「山小屋」 2007/05/06(日) 02:32:14 ID:7L7mgh8Q0
夜が白んできて、俺たちのゲームは自然と終わった。吹雪も止んだようだ。
やがて無線機が鳴り、救助のヘリが向かっていると知らせてくれた。みんな床に
へたり込んで、ヘリの音を待った。助かった、誰もがそう思っていた筈だが、
俺たちはみなずっと黙り込んでいた。ヘリが到着し、救助隊員に抱えられて全員が
乗り込み、麓に着いても、病院に入れられても、俺たちは黙りこくったままだった。



みんな、夜が明けた時、気づいたのだ。
山小屋の床が三角形で、柱が三本しかなかったことを。