マンホール

98 前スレ1 2006/12/20(水) 19:12:24 ID:Z+eqsH5u0


書いた。元ネタは『マンホール』で。

ある日私がいつものように学校に向かって歩いていると、目の前に蓋の外されたマンホールが見えて来た。
近付くと、マンホールの中から声がした。タスケテ、タスケテ、酷く弱った声が響いていた。
私はマンホールを覗き込んだ。とは言っても別に助けるつもりなんて無い。ただの野次馬根性だ。

その時私は自分の体が穴に吸い込まれる様な感覚を感じた。気がつけば私は穴の中に身を投じていた。
目の前にマンホールの中の黒い闇が広がる。しばらく落ちたところで地面に体がぶつかった。
だが幸いにも怪我は無いようで、痛みと言ってもお尻の辺りに少し感じる程度だった。私の落下した地面は妙に柔らかかった。

私は上を見上げた。白い光りが穴から差し込んでいた。私は助けを呼ぼうと叫んだ。
本当は自分で歩くことが出来たが、何故だか助けを呼ばなければ行けない気がした。
タスケテ……。うまく声が出せず、どこか弱々しい声になってしまった。
タスケテ、タスケテ……。

しばらく叫ぶと、誰かが来た様で、マンホールの穴から差し込む光が誰かの頭部で遮られた。
逆光で表情は分からないが、こちらを見ていると言うことが分かった。
私は叫んだ。タスケテ……、タスケテ……。
すると私を助けようと思ったのか、こちらの様子を伺っていた人物は少し身を乗り出した。
良かった、これで助かる。そう思った。
だが予想とは裏腹に、覗き込んだ主はそのまま吸い込まれるようにして穴に身を投じた。
身を投じた人物の体は重力に従い、徐々に私の視界に広がって行った。
私は動くことが出来ずにただ私の頭部へ落下してくる人物を凝視した。
私は私のクッションになった誰かと同じように、落ちてくる誰かの下敷きになった。