鞠つき


121 1 2006/07/13(木) 17:18:37 ID:sGqj8jmy0
保守がてら書いてみた。分かりにくかったらスマソ

五年三組の担任の綿谷先生が行方不明になった。
彼女の自宅には特に変わったところもなく、財布などの金目の物は学校の職員室に置きっぱなしになっていたため、
校内では綿谷先生が何らかの事件に巻き込まれたのではないかとうわさされていた。
そのため私のいる小学校では集団下校が義務付けられるようになり、放課後に運動場で遊ぶ生徒はいなくなった。

そんなある日の放課後、私が一人でボール遊びをしようと思っていたところ、運動場で一人の生徒を見つけた。
彼はサッカーボールを蹴って一人で遊んでいた。
私は彼に近付いて話かけた。
「ねぇ君、何でここにいるの?生徒はもう帰らなきゃだめなんだよ?」
するとその子は私を見て怪訝な顔をした。
「うるさいな、俺は学校で遊びたいんだよ。それにお前だって残ってるじゃないか」
「私は人のいない運動場で思いっきり遊びたかっただけなの」
私は言った。

空では太陽が沈む気配を見せていて、夕日が空気を赤く染めていた。
真っ赤な光が私の目の前にいる彼の顔を照らしていたため、私からは彼の顔が良く見えたが、おそらく彼からは逆光になって私の顔はよく見えないのだろうと、私は思った。


122 1 2006/07/13(木) 17:19:37 ID:sGqj8jmy0
「なぁ知ってるか?」不意に彼が言った。「鞠つき生徒の話」
「何?それ」
私が言うと彼がにやりと笑った。夕日が彼の顔に影を映し出し、そのせいで彼の顔が不気味に見える。
「放課後の校内に一人で残ってるとさ、鞠つきしている生徒がいるんだ。どこのクラスかも分からないし、誰なのかも分からない。
で、良く見たらその子のついている物は鞠じゃないんだ」
「じゃあ、なんなの?」
私は息をのんで言った。
「……首だよ。自分の首」
そう言って彼はサッカーボールを壁に蹴った。ボールが壁にぶつかって、また彼の足元に戻る。
私が肩を震わせると彼はケラケラと笑った。そこで、彼が私をからかっていると気付いた。
「もう、脅かさないでよ」
「ごめんごめん」彼はそういった後、続けて言った。「そんなことより、どうせ二人だけなんだし、何かして遊ばないか」
そう言って彼はニコッと笑った。それは先ほどのような不気味なものではなく、屈託のない子供の笑顔だった。


誰もいない運動場に、乾いた風が吹いた。それは土を巻き上げ、私の視界を朧にする。
「それじゃあ、鞠つきしようか」
私が言うと、彼は少しだけ笑顔を強張らせた。どうやら私が先ほどの仕返しをしていると思っているようだ。
「なんだよ、さっきの続きか?からかって悪かったって」
彼が言うのを無視して、私は手に持っているボールをついた。不思議なくらいそれは良く跳ねた。
ポーンと言う音が、静かな運動場にこだました。

123 1 2006/07/13(木) 17:20:44 ID:sGqj8jmy0
「さっきの話ね、少しだけ間違ってるよ」唐突に私が言うと、彼はえっ?と言う顔をした。
「鞠をつくのは女の子なの。そして突いていたのは自分の首じゃない。友達の首なの。
友達のいなかった女の子はよくクラスの友達に苛められていて、いっつも一人で鞠つきをしていたの」
彼がつばをのむ音が聞こえた。私はかまわずに続ける。
「彼女はクラスのみんなが大嫌いだった。だってみんな、いつも彼女をからかって、罵って、彼女の筆箱を捨てたりするんだよ?ひどいでしょ?
だから彼女はクラスのみんなの首をもぎ取って鞠つきしようって思ったの。それは彼女にとって素晴らしいアイデアだったんだ」
私はまたボールをついた。ポーン、という無機質な音が響き渡る。
「だけどある日彼女は死んでしまったの。事故で。これからやっと楽しい事をしようって時だったのに、かわいそうだよね。
だから彼女は今も成仏できずに、学校をさまよっては、昔の同級生をさがしているんだ」
私はまた、ボールをついた。すると地面に石があったらしく、ボールは目の前の少年の方へ転がって行った。
ボールを見た少年は、うわっ、と言って尻餅をついた。

夕日に照らされた綿谷里子ちゃんの顔が、地面を転がっていた。