- 149 1/2 2006/07/18(火) 21:51:39
ID:fPmY3u550
- 忘れもしない、あれは八年前のことだった。
ある有名な心霊スポットへ、深夜に車で行ってみた。
トンネルを抜けると、そこが有名な心霊スポット。 と、そこに目の前にふっと女の人の白い影が。 あ!
と思って、慌ててブレーキを踏んで降りてみたところ、そこに人影はなく、目の前は崖。
ガードレールが壊れていて、ブレーキを踏んでなかったら落ちてしまっていたかもしれない。
「あの幽霊は助けてくれたんだ」
そう思って、そこで手を合わせ、お祈りして帰路についた。
トンネルを引き返す途中、ふとミラーを見ると、後部座席に先ほど目の前を横切った女の人の姿が……。 その女の人は、こう呟いた。
「死ねばよかったのに……」
僕は心底ぞっとした。が、不思議なのはそれが怨めしい感じではなく、
どちらかといえばこちらを思いやるようなニュアンスだったということだ。
- 150 2/2 2006/07/18(火) 21:52:28
ID:fPmY3u550
- その日からずっと、僕は地獄の中で生活している。
あの晩、トンネルからの帰りに、道端で人がうずくまっているのを見付けた。
真夜中の田舎道でのことでもあり、普段なら罪悪感を感じながらも見過ごしていただろう。
だがその時は「死にかけた」という興奮からか、僕は見知らぬ他人を助けてしまった。
そして信号待ちの途中、後部座席から手が伸びてきたと思ったときには、僕は意識を失っていた。
ドアが開き、閉まる音。階下に明かりが点く。午後九時になると、あいつが帰ってくる。
監禁された当初はともかく、今ではその事にも殆ど何も感じなくなった。 それから午前三時くらいまで、僕はありとあらゆる拷問を受ける。
両手の爪はとっくの昔に剥がされているし、下半身は火傷の痕で腐り、爛れている。
「こいつは人間の皮下組織を食い荒らす虫だ」
そういって見せられたグロテスクな甲虫と一緒に、一晩中狭いプラスチックの箱に閉じ込められた時は、
本当に狂ってしまうと思った。いや、狂ってしまえればまだ良かった。 しかし、あいつはとても巧妙で、僕が精神的にギリギリだと見るや、
「もう飽きたから一週間後に逃がしてやる」などといって希望を持たせる。
僕は嘘だとわかっていながら、それでも微かな期待を抱き、正気を取り戻してしまう。
また、午後九時が訪れる。あいつが帰ってくる。僕は朦朧とした意識の中で考える。
八年前、あのトンネルで死んでいれば、こんな目に遭うこともなかったのに。
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