よかったですね

187 1 2006/08/02(水) 01:27:44 ID:f+nosNWc0
ちょっと今回分かりにくくなってしまった。

いつものようにバイト帰りに先輩の家に寄ってグダグダと馬鹿話をしていたのだが、ふと用事を思いだしたので家に帰る事にした。
「なんだ、もう帰るのか」
用事があるもんで。僕はそれだけを言うと近くにあったかばんをつかみ、先輩の家を出た。
先輩は一人暮らしで都内にあるワンルームマンションに暮らしている。そのため僕達は毎晩気がね無く遊ぶことが出来た。
テクテクと暗闇を歩いている途中、パトロール中らしい警官とすれ違った。そう言えば最近ここらで通り魔がいると聞く。おそらくそのためのパトロールなのだろうと、僕は思った。

先輩の家を出てしばらくあるいた時、僕は不意に自分の手に持っているのが先輩のかばんだと言う事に気づいた。
僕と先輩のかばんは形と色がほとんど同じなので時々間違えてしまう。こういうことは良くあったので僕は自分の不注意さに呆れながらも先輩の家へと戻った。

「先輩?すいません。またかばん間違っちまいました〜」
冗談めかしてドアをあけるが返事はなかった。部屋は真っ暗で、どうやら先輩は寝ているらしい。
僕は足音を立てないよう部屋に入り、手探りでかばんを探す。だがなかなか見つからない。
ふと先輩の寝息が聞こえてきた。よほど変な場所で寝ているのだろう。呼吸音はソファーの辺りから聞こえてくる。

しばらく探すうちに次第に暗闇に目が慣れはじめてきた。暗かった視界にぼんやりと輪郭が浮かび上がる。だがどうやら部屋のカーテンは締め切られているらしく、はっきりとは見えなかった。部屋を真っ暗にするのを嫌う先輩にしては珍しいな、と思う。
不意に手に何かが当たった。それと同時に鈴の音が鳴る。僕がかばんにつけている鈴着きのキーホルダーの音だ、と気付く。
僕はそれを手に取ると音を立てずに部屋を出た。鍵を開けっぱなしで寝ているのは無用心なので、玄関においてある鍵を使おうと思ったが、奇妙な事に鍵は置いていなかった。

188 1 2006/08/02(水) 01:28:49 ID:f+nosNWc0
「おかしいな、いつもはここに鍵を置くのに」
 そう呟きながら手探りで鍵を探していたが、ふと昼真した先輩との会話を思いだした。
「最近鍵をなくしちゃってさ」彼はその時、そう言っていた。鍵がないのなら、僕が鍵をかける事はできない。
仕方なく僕は玄関から先輩に向かって言った。
「鍵、閉めといてくださいね」
返事はなかったが、かすかに物が動く気配がするのを感じたので先輩が起きたのだろうと思い、部屋を出た。

次の日、先輩の家に寄って見たところ、異常なまでに人が集まっていた。話を聞くに、ここで殺人があったらしい。
先輩が心配になって先輩の部屋に行こうとしたところ、警官が先輩の部屋を封鎖していた。もしかして殺されたのは先輩?脳裏をその様な不安がよぎる。
そう言えば昨日、先輩はカーテンを閉めていた。アレはもしかして、外から犯行を見られないために閉めたんじゃ?
それに僕のかばんはあんなところに置いていただろうか?確かあそこは最初に探したはずだ。
僕は部屋の前にいる警官に被害者の知り合いである事を話した。良く見ると彼は、昨日見た警官だった。
彼は何かを思いだす様に僕の話を聞いていたが、やがて「あぁ、」と言った後、少し微笑んでこういった。

「よかったですね。電気をつけなくて」