赤いクレヨン+α


736 2006/10/30(月) 22:57:19 ID:tyS2JHEz0
妻が行方をくらませた。捜索願いを出しても結局見つからなかった。それを機に私は15年勤めた会社を辞め、社宅を出て、田舎の小さな一軒家を買った。
息子と二人で住むなら申し分ない広さだ。それからしばらくして俺は、なかなかうまくいかない仕事にイライラすると、まだ小学校に上がったばかりの幼い息子にあたるようになった。
そして引っ越してから一ヶ月後の夜、酒の飲み過ぎでベロベロになった俺は、何度言っても聞き分けの無い息子にキレてしまい、部屋の奥にある納戸へ閉じ込めてしまった。
納戸といっても特に何か置いておる訳でもない、一畳程の空間。

「もう言わないって約束したら出してやるよ」

そう言って俺は居間に戻ると、そのまま寝てしまった。翌日、酒の勢いで何もかもすっかり忘れてしまった俺は、息子の姿が見えないことに困惑した。
時計を見ると8時20分。
あぁ、学校へ行ったのだ。
勝手に解釈した俺は、自分も会社へ行く為にいそいそと動き出した。
夕方、帰って来てもやはり息子はいなかった。近所を探したが見つからず、翌日に捜索願いを出した。
人生において二度もこんなものを出す事になるなんて。己の行いを悔いたが、もう遅い。
結局息子も見つからなかった。
それから10日くらい経った頃だろうか。家が異常に臭うようになった。どうやら原因は奥の納戸のようだ。真夏だし、何か食べ物でも腐らせたのか?
そう思い、納戸を開けて旋律した。既に、人間の形をしていない息子が横たわっていたのだ。
その瞬間、俺は全てを思い出した。そして何を思ったのか俺は、その部屋を隠さなければ、と思い、
板をと釘を買い扉に打ち付けた。更にその上から、壁紙を貼り、まるで何もなかったかのように細工した。
その後しばらくはそこで暮らしたが、耐え切れなくなり、家を売り払って実家に帰ってしまった。












737 2006/10/30(月) 23:00:00 ID:tyS2JHEz0
それから数年後。その家に買い手がついた。買主は古くなった家を大幅にリフォームするつもりらしく、
契約が決まって直ぐに業者を呼んだ。若い夫婦で娘が一人と8月に出産予定の子供が一人。
最初に間取りの確認のため、業者が寸法を測ると、どうも合わない。どうやら家の奥に一畳程の空間があるようだ。
業者は夫婦に許可を取り、中の壁を剥がす事にした。
すると、板でメチャクチャに貼り付けられた扉が出てきた。業者は一枚一枚丁寧に剥がす。やっと全部取除き、
ドアをそーっと開けると、誇りっぽい臭いが広がった。
うっすらと光が差し込む中、一番最初に目に入ったのは、白骨化した子供の死体。
「うわぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」
業者の青年が、後ろに倒れこみ尻もちをついた。そして壁一面に赤いクレヨンで書きなぐられた文字。


「おかあさん いるよ おとうさん ずっと おんぶしてる」