おんぶ

904 【おんぶ】 sage 2006/11/15(水) 16:59:19 ID:1KqIMWcPO
あれからちょうど1年。妻の命日に、証拠不十分で不起訴になった。
今日、妻の両親に預けた息子を迎えに行く。
髭をそり、顔を洗う。1年でずいぶんと老けた。
頬がこけて、目の下には青黒いくま、瞼が痩せていて、まるで病人のようだ。

・・・・・・・・・車で妻の実家へ行く。
息子は元気だろうか?

ピンポーン

『パパ?』
息子の顔をみて、安心した。元気そうだ。
『おじいちゃんとおばあちゃんから、きいたよ。パパは【むじつ】だから、もういっしょにいられるんだよね〜』
無邪気に笑う息子の頭をなでてやる。事件が終わったのを実感し、俺も自然と笑顔になった。
妻の両親は、家から出て来ないようだ。顔を合わせづらいのは、こちらも同じ。だか、挨拶はしておかなければ・・・。
窓から、無表情な目がこちらを伺っている。気が重いが・・・、行かないとな・・・。

『ママも“パパをゆるしてあげる”って。よかったね、パパ』
『!?』
肩が重みがかかり、目の端に腕が見える。ちょうど俺の肩に、おぶさっているような・・・。
左指には見覚えのある指輪。俺の左指にはまっいるのと同じ指輪。
交差された腕がほどかれ、指輪を外し、再び抱きしめられる。
ミシミシと肩の骨が軋む。
声が・・・でない・・・
ゆ・・・る・・・して・・・くださ・・・



『よかったね、パパ。ママわらってるよ』
息子の無邪気な笑顔が